モノカルチャーと土地問題 

農業及び資源環境研究所(Instituto de Agricultura, Recursos Naturales y Ambiente: IARNA)は
私立ラファエル・ランディバル大学の研究機関の一つです。


その名の通り、天然資源や環境について、
特に農業の状況と照らし合わせながら研究調査を行う機関で
自然や環境を保護しながら農業生産を進めていけるバランスを模索するという
崇高な使命を負っているっぽいところであります。
これ以上書き続けるとボロが出そうなので、IARNAの話はこの辺にして。


そのIARNAのリサーチャーであるラウル・マアスは
この地域のモノカルチャーは植民地時代に端を発していると指摘しています。
以下、マアスへのインタビュー記事を元にしながら、一部補足したものです。


植民地時代、スペインはアメリカ大陸の先住民を自らの臣民と定義づけ、
先住民を植民者に委託するエンコミエンダ制を導入します。
先住民は労働力の提供と貢納を義務付けられ、
植民者は先住民のキリスト教化を引き受けることで魂の面倒をみる、
というのがこのエンコミエンダ制。


スペイン人の宣教熱というのは
イベリア半島がイスラム教徒に征服され
後に取り戻したという歴史的事実によるところも大きいのでしょうが、
悪意がないだけに却って性質が悪いという典型例ではなかろうか・・・。


というのは本題とは関係のない話ですが。


さて、労働力を提供することとなった先住民はやがて奴隷化し、
酷使された末、疫病などで人口が激減。
持ち主がいなくなった土地は植民者が自分の物としていったのでした。


グアテマラがスペイン領から独立した時、
土地を持っていたのは植民者の子孫であるスペイン人、
クリオーヨ(アメリカ大陸生まれの白人)、
ヨーロッパ系の血を引くメスティソ(混血)らだったそうです。
当時の労働法では、先住民はエンコミエンダ制の時代そのままに
「自分の土地ではないところで無償で労働力を提供すること」が義務付けられており、
これが廃止されたのは何と1945年のアレバロ政権時代のことでした。


その間約350年!


インタビュー記事にはマアスの言葉として次のように書かれています。
「セベロ・マルティネスは『(インディヘナよりも)奴隷の方が恵まれている』と言っている。
 なぜなら奴隷は財産であり、投資に見合うよう食事を与えたりしなければならないが、
 インディヘナにはその必要さえなかったから」。


エンコミエンダ制は時とともに少しずつ姿を変え、
やがて土地は植民者に配分されるようになります。
先住民らはその一画に土地を与えられ、住居や畑として利用することが認められます。
先住民の共同体ができあがり、その中のリーダーが土地の配分や、
植民者の土地へ作業に行く順番を決めたりしていたのでした。


この方法は、若干姿を変えてはいますが、現在でも引き継がれています。
サトウキビでもアブラヤシでもコーヒーでもバナナでも、
労働者はその一画に住み込んで労働力を提供する。
その報酬は最低賃金にさえ満たない程度であることもまた多々なのですが。


なぜそうやって他人の土地で働かなければいけないのか。


グアテマラ独立時、それまではスペイン王室領とされていた土地は
グアテマラ政府の土地となり、
カトリック教会が保有していた土地は、後に国有地となります。
これらの土地の大半は移民としてやってきた外国人に払い下げられます。
確か、当時グアテマラは移民促進政策を取っていて、
移民として来た外国人には安価で土地が提供されていたのだったと記憶しています。
ベラパス地方にコーヒー農場が増えていったのもこの頃ではなかったでしょうか。


1970年代にペテン県の50万ヘクタールの土地が国有地化されますが、
和平合意により避難民に払い下げられており、
現在では、農地として使用可能な国有地はほとんど残っていない状態です。
新たな農地を入手するためには、誰かから購入しなければならない。


一方プランテーションをやろうとすればとまった土地が必要。


こうして、土地を巡る交渉が始まります。
「あんたは土地を持ってる。そいつを買おう」
「いや、この土地は売らん」
「あんたが売ってくれないのなら、あんたの未亡人から買うしかないな」
というのが序の口。


それでも粘ると
「ま、実際のところ誰の土地でもかまわん。
 今度ウチの兵隊何人か連れて来て、この辺りに住まわせるわ」
と実力行使に発展してしまうという。


そうでもしないことには農地はない、ということなのでしょうが。


ここの土地を買う、って狙いを定めると後は実践あるのみです。
通常はQ1,000程度の土地をQ4,000の現金一括でポンと買い上げ、
売ろうとしない人の土地はぽつーんと離れ小島状態にされてしまう。


取り残された土地の所有者はにっちもさっちもいかなくなって売却を決意、
でもその時にはもっと安い値段になってしまう。
サン・マルコスではこうして買い上げられた土地が
後に金鉱として開発され、
売った人達はQ4,000なんかで売るんじゃなかった、騙されたと地団太を踏んでいるとか。


こうして和平合意の遂行のために払い下げられた土地はエリートのものとなり
土地を売った人達は住む土地も耕す土地もないまま
受け取ったお金で買った車の中で生活し、
わずかに残された自然保護区などに侵入することになるのです。


共同体は散り散りとなり、
残されるのは広大に広がるサトウキビ畑だったりアブラヤシ畑だったり・・・。


グアテマラはその内サトウキビやアブラヤシのジャングルの中に埋没してしまうのかもしれないな。


なんてちょっと本気で考えてしまいました。


[ 2012/10/31 06:00 ] ニュース | TB(0) | CM(0)

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