「コップの水を溢れさせた泥棒」 

ディナ・フェルナンデスは以前はプレンサ・リブレ、
現在はエル・ペリオディコでコラムを書いている記者ですが、
昨日のエル・ペリオディコ紙に書いていた内容が興味深かったので
ここで再掲してみます。


タイトルは「コップの水を溢れさせた泥棒」。
もう少しこなして言えば「堪忍袋の緒を切らせた泥棒」ですかね。


登場するのはディナの友人のエウヘニオ。
ある日の朝9時頃、車でアタナシオ・ツルという通りを通っていた時のこと。
赤信号で停車した時、気がついたら両側にバイクが停車。
うち一人がピストルで車の窓ガラスをコンコンコン。


これはグアテマラで多くあるバイクによる強盗で、
ターゲットは信号停止している車、
狙うものはお金だったり携帯だったり、その場で目に付く高価なものだったり。
そんなわけでエウヘニオは隣のシートに置いてあったiPhoneと指輪を提出します。
ちなみにエウヘニオ氏、携帯を盗まれるのはこれで3度目。


3度目ともなれば少しは慣れたもの?で、
怒り心頭のままオフィスに着いたエウヘニオ、
パソコンを立ち上げると盗まれた携帯の位置をGPSでチェック。
7区のキンタ・サマヨアというコロニアにあるモールで止まるのを確認すると
直ちに追跡に出動したのでありました。


彼のオフィスの近くにはとある長官の家の警護に当たっているパトカーと警官がおり、
エウヘニオはまず彼らに助けを求めます。
警官は快諾して現場へ急行(それでいいのか、警護はどーすんだって気もするけれど)、
GPSを追跡して駐車場に止まっているアウディまで辿りついたのでありました。


今度は警官が車を両側から囲みコンコンコン。
中には男性2人が乗っており、
後部座席にはバイク用のヘルメットやらジャンパーやらが。


肝心の携帯電話と指輪が出てくるまでにはちょっと時間がかかったものの、
無事発見されると二人はお縄、そのまま裁判所の建物に連行されて予審に付されたのでありました。


「後は手続きするだけだし」と気楽な気持ちだったエウヘニオ。
しかしそれは大きな間違いだったと気づくのに時間はかからず。
まず、この種の事件(って窃盗のこと?)を担当する検事が、
グアテマラシティ全体で1人だけ(多分当番制だとは思うけれど)。


でまず、その検事のところで状況などを説明するわけですが、
彼の前に並んでいるのはざっと40人ほど。
エウヘニオの番がやってくるまで実に8時間かかったのだそうで、
でも計算すると1時間あたり5人、1人あたり12分ですから、
このスピードは褒められたものだとは思うんですけれどもね。
てか食事を取ってる暇もないんではないかという気が・・・。


で、その8時間の間、裁判所ビルの地下で
容疑者やら被告人やらと同じ空間を分かち(向こうの方は一応檻の中ではありますが)、
被告人の方はさっさと弁護人を雇って、
この弁護人がまた「いくらいくら払うから、黙っていた方が得じゃない?」とかなんとか
おいしい話を持ちかけてきたりするんだそうです。


ディナにこの話をしたエウヘニオ、
「警察にはよくしてもらって感謝しているよ、でもこのシステムは何とかならんのかね?」
と制度の欠陥に痛くご不満だったとか。


そしてディナはこう続けます。
「彼の話をここで書くのには理由があります。
 その数日後、エウヘニオが強盗にあった場所からそう遠くないところで
 女性から携帯電話を盗もうとしていた2人組のバイクの男を
 別の男性が殺しているからです」。


「このニュースは、殺人を犯した者を称える声に迎えられました。
 それを不思議に思うわけではありませんが、
 その一方で、多くの人がエウヘニオのことをクレイジーだとか無謀だとか言っていました」。


この辺りのコメントは私も痛く感じるところです。
例えば、エウヘニオが突き出したこの2人に仲間がいたとして、
彼の身元を突き止めたらどうなるか。


あるいは、検察官の力不足で2人が無罪放免になったらどうなるか。
有罪だったところで、強盗ですから数年で釈放。
出てきた後で復讐されたりするよな心配はないのか。


更にはエウヘニオのように時間を割くことができなければ
その場で釈放されてしまいますよね。
朝9時に強盗にあったエウヘニオが犯人逮捕までに1時間かかったとして
その後8時間とすると18時。
まるまる一日を強盗を告発するためだけに割くことができる人がどれくらいいるんだろう。


そんなあれやこれやを考えていると、とにかく復讐怖いし、
お金で済むことなら我慢して新しい携帯をゲットした方が楽じゃん!
とマジメに思うわけです。


司法が機能しないと言うけれど、
機能しないまま放置している責任の一端は自分たちにあるというわけですよね。


その一方で、犯人については許せないという感情を抱くわけで、
こんな奴らは殺されてもアタリマエだとか、
リンチにかけてしまえとか、
そういう風潮になっているのがグアテマラの怖いところです。


この、男性に殺された2人の強盗の内、1人は確か13歳の少年でした。
犯人グループは3台のバイク(だったか)に乗っており、
2台が実行犯、残る1台は遠くから監視していたのだったと記憶しています。


13歳の少年が自分の意志で犯行に加わったわけではなく
周囲、特に家族により犯行に加わるようにされたわけでしょう。
(実際、確か一緒にいた兄が何とか弟を救おうとしていた、という話でした)


そういう子供を一人の犯罪人として処刑し、それを良しとする。
あってはならないことなんでしょうけれど、
一方で私達のコップはもう溢れんばかりに一杯なのであり・・・。


ここからどうやったら抜け出せるのだろう・・・(タメイキ)。


[ 2012/04/09 23:48 ] ニュース | TB(0) | CM(0)

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