以前から読みたかったロドリゴ・レイローサ(Rodrigo Rey Rosa)の
La Orilla Africana(ラ・オリーヤ・アフリカーナ)の再版が8月に出たので
早速入手して読んでみました。
レイローサはグアテマラ生まれの作家ですが
経歴については本当に簡単にしか知られていません。
結構探して見たんですけれど、いずれも
「グアテマラで学業を終えた後NYで映画を勉強、
その頃モロッコのタンジェに旅行し、
アメリカ人でタンジェに住み着いた
作家であり作曲家であるポール・ボウルズと出会う。
数年間タンジェに住み、
レイローサの最初の3つの作品はボウルズが英訳した」
程度のことしか書かれておらず、
いつ頃タンジェに住んでいたのかは不明ながら
そのタンジェを舞台にしたのがこのLa Orilla Africana。
初版は1999年です。
この作品の邦訳は「アフリカの海岸」というタイトルで出ていますが、
僭越ながら「海岸」という言葉はしっくりこない気が・・・。
「アフリカのほとり」の方がぴったりくると思うんだけれどな。
そんなことはともかく。
内容については
Amazonとか
すみ&にえ「ほんやく本のススメ」なんかが
うまくまとめて下さっているので、
そちらをご覧頂くことにして(手抜きじゃありませんからねっ!)、私の感想を。
タンジェの羊飼いの少年と
パスポートをなくして身動きできないコロンビア人と
タンジェに住む裕福なフランス人女性なんかが出てくるこの物語、
実は場所をグアテマラに置き換えても十分成り立つ話じゃなかったのかなぁ、と。
インディヘナの少年の羊飼いに
パスポートを無くすコロンビア人、
そして裕福なカナダ人女性かな。
で横軸に絡むのがアメリカへの不法入国とか麻薬の話。
でもそうしちゃうと余りにも現実的で
生々しい話になってしまいそうで
この物語がかもし出すゆるやかな雰囲気は失われてしまいそう。
実際、モロッコのタンジェという舞台設定が絶妙です。
羊飼いの少年は当然ながらイスラム教で
時折出てくるアラビア語の響きも
異国情緒を醸しだしているし。
レイローサの文章は平易で読みやすいのですが
きっちり文が練られていて、無駄がない感じ。
ストーリーはゆるゆると流れて行き、
川のようにゆったりと合わさったり、別れたり。
タンジェの風景のように、いささか乾いた登場人物たちが
さりげなく現れ、陽炎のように消えて行く。
タンジェに吹く風のような、ひんやりとした読後感ながら
とっても印象的な作品でありました。
レイローサの作品の中では、一番読みやすいと思います。
と言っても、確かこの作品で5作目なんですけれどね、私が読んだの。
機会がありましたら、是非。