政治とカネと 

最近なにやら無茶苦茶だ。


無茶苦茶に慣れている私でも、
ちょっと待って!と言いたくなるくらい無茶が苦茶苦茶だ。


先週金曜日には農牧省の長官が大統領にクビを切られたかと思うと、
その日の内に憲法裁判所が教育省長官のクビを切った。
そして今週月曜日には内務省長官のクビがコロリ。
これもまた大統領が切り落とした。


とにかく長官(日本で言うなら大臣)のクビがよく転がる国である。
おむすびころりんならぬ、長官ころりんすっとんとん。
それとも長官ころころどんぶりこ。
どっちでもいい。
どっちでもいいけれどこんなにころころするのはいい加減止めて頂きたい。


ちなみに農牧相と内相は汚職絡み、
教育相の方は、裁判所命令に従わずMifaproのデータを提出しなかったため、である。
後日談を言えば、教育相が解雇された後にデータは提出された。
多分きっと、教育相を辞めさせたかったのかもしれない。


それはともかく、こうして政治は益々混沌の様相を深めている。


内相の後任にはカルロス・メノカル(Carlos Menocal)が就任しているが、
何しろ2年と1ヶ月半ほどのアルバロ・コロン政権で、5人目の内相なんだそうである。
国内の治安を担当するのが内務省の仕事だが、これじゃあ安全になどなるわけない。
だからサンドラのお友だち人事は止めてくれ、と言っているんだ。


更迭された内相のラウル・ベラスケスは、
大統領によればPNC(警察)向けのガソリンの購入の際に不正をしたと言う話だ。


元々今の政権は入札に関わる摩訶不思議な動きが多いのだが、
PNCのガソリンは、競争入札が不調に終わった(という建前)ので、
入札に寄らない随意契約によりマスカナ社(Maskana)という奇妙奇天烈な名前の、
しかも創立10ヶ月という会社から購入することになったのである。
契約金額はQ4000万($500万)、期間は不明。


しかしこのマスカナ社、ガソリン屋ではないらしい。
そこからしてまずおかしいと誰もが思うと思うのだが、
もっとおかしいのはガソリンを購入する以前に金を払いこんでいたことだ。
ガソリン購入用のチケットだけ受け取って、多額の金額を支払ってしまうなんて
一体どこにそんなお人好しのグアテマラ人がいるもんか。
日本人だってやらないだろうが。


そんなわけでこのお金、マスカナ社がガソリンとは全然関係ないものの購入に使ってしまい、
PNCはガソリンがなくてパトカーを走らせることができなくなってしまった。
チケット持ってスタンドに行っても、売ってもらえないのだ。
こうしてガス欠で走れなくなったパトカーの数は地方を中心に6916台。
喜んだのは麻薬組織と密輸組織だと思われるが、こちら方面の談話は残念ながら入ってこない。


ともかく、そういう理由でベラスケスは更迭されたのである。
大統領によれば。


しかし。
ベラスケスは「木曜日に口頭で辞職を申し入れた」と言っているのである。
「返事をもらえなかったので、日曜日に返事をもらえるよう秘書官に申し入れた」と言うのである。
ベラスケスの更迭が発表されたのはその日曜日の夜9時頃である。
ローカルのテレビを見ていたらいきなり大統領がテレビジャックをして現れた。
「わふぁひは、ふぁいむひょうひょうはんの ふぉうへふふぉ ひめまひは」
何度聞いても意味不明の大統領談話がいきなり登場する時の不快感をご想像頂きたい。


そんなわけで、ベラスケスはコロン大統領は嘘つきだと言っている。
PNCのガソリン契約問題で検察に告発したのは自分だと言っている。
ベラスケスの言っていることが本当なのかどうかはともかく、
彼の方が滑舌が良いことだけは確かである。


まだある。


新内相のメノカル、最初にやったことは副長官4人をばっさりやることである。
いや、この国は刃物よりは銃器の国だから、バンバンバンバンと撃ち落したと言うべきかもしれない。
とにかくまとめて4人更迭してしまった。
副長官が4人もいたなんて知らなかったなどというのはここだけの話である。
なんでも司法支援担当、総務担当、治安担当、地域担当と分かれていたらしい。


その地域担当副長官が治安担当副長官を暗殺業に関わっていると告発したからまたすごい。
政治の混沌というよりは子供の喧嘩である。


もう少し詳しく書けば、地域担当副長官だったフランシスコ・クエバスは
治安担当副長官だったマルレニ・ブランコはPNCに存在する暗殺集団を率いていたとして
2月4日にCicigに告発をしたと言っているのである。
ちなみにブランコは副長官になる前はPNCの長官もしていたことがある。
全く何の役にも立たない長官だという印象しか残っていないが。


「折角勇気を出してCicigに告発したのにその後全然コンタクトしてこない。
 これでクビになったら、まるで不正したのはオイラみたいじゃないか。
 それくらいだったら、全部ぶちまけてやる」とクエバスは女々しくも考えたのであろう。
いや、最近は女性の方が強いから男々しい奴、と言った方が良いのかもしれない。
何と言ってもブランコも女性なのだ、一応。
そう言えば、サンドラも確か女性だったような気がする。


Cicigは実際、この件を捜査中なのだそうだ。
カルロス・カストレサナは「秘密にしておくべきことをどうして公表してしまうのか」
と例のちょっと困ったような地顔をもっと困った顔にして困っている。


クビになったベラスケスは
「クエバスの言ってることは事実。大統領は正しい判断と決断ができないでいる」とも言っている。
ブランコとその一族が大統領と大統領夫人サンドラ(またの名を陰の大統領)に近いことは巷間の常識。
ブランコとその他大勢がぶつかることは想像に難くない。
問題は、大統領がサンドラだけじゃなく
ブランコにまで物言うことができないらしい、ということの方だろう。


で、である。
こんな状況で内相に就任した人物はさぞ経験豊富かつ清廉潔白な人物・・・と誰もが期待するはずだ。
その期待に違って就任したのがカルロス・メノカル。
元新聞記者で治安部門での行政経験は一切なし。
数日前までは大統領府のCicig担当補佐官。
早い話がCicigとのリエゾン役で、クエバスの告発を知ることのできる立場にいた人物である。
またしてもアミーゴ関係の人選のようで、くらくらする。


というところで今日は終わる予定だったのだが、
まだ付け加えるべきことがでてきてしまった。
これを書いたところでギャラが出るとかギャラが上がるとか、
そういう話は一切ないから切ない話だ。


しかしそれでも現職の警察庁長官が麻薬取引容疑で逮捕されたとあっては
乗りかかった船と言うべきか
毒を食らわば皿までと言うべきか、
はたまた右の頬を殴られたら左の頬も差し出せと言うべきなのか、
とにかくぴったりする比喩が思い浮かばないくらいのものすごいニュースであることだけは事実だ。


ちなみに前任の警察庁長官ポルフィリオ・ペレスも8月だったかにコカインと金を盗んだとして逮捕されている。
ひょっとしたらこのポストは盗人を逮捕するための囮ポストなのかもしれない。
だから後任(未定)もきっとやがて逮捕されるのだろう。
警察庁長官とは片思いのようなものだ。
期待してはいけないのだ。
うまくいくはずがない、と期待値が低いほど、
ダメだった時のダメージは小さく、
間違ってうまく行った時の喜びは大きいというものだ。


あまりに切ない片思いの故に話の筋が逸れてしまったようだが
今日逮捕された方の警察庁長官はバルタサル・ゴメスと言う。
かなり以前から隠密捜査が行われていたらしいが
ベラスケスの更迭理由となったガソリン問題で裁判所に証言に来たところを御用となった。


ゴメスと一緒に麻薬捜査班の警官2人も逮捕されている。
昨年4月に麻薬組織と警官の間で銃撃戦が発生し、
警官5人が亡くなった事件に関与したとされている。
長官に裏切られた末端の警官の不運が悲しすぎる。


話は飛ぶが、公金流用やらマネーロンダリングやらで逮捕され、
どうやら正式にアメリカに身柄引き渡しとなりそうな元大統領アルフォンソ・ポルティーヨについて、
以前カストレサナは「盗んだ金のうち、ポルティーヨの手に渡ったのは25%、残りは麻薬組織に流れた」
という話をしていたことがある。


だからこそポルティーヨの身が危ないという話があり、
だからこそアメリカに身柄を引き渡して司法取引で麻薬組織を摘発するつもりなのだろうと想像するが
最近の事件には常に麻薬の影がつきまとう。


日本のように政治とカネで話がすんでいる間はまだマシで
政治とカネとクスリと犯罪が手を取り合って進んでゆくこの国の行方は想像するだに恐ろしい。


それでもまだかすかな希望を捨てたわけではないのではあるが。


[ 2010/03/02 23:53 ] ニュース | TB(0) | CM(0)

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