「ヨハネはマリアに嘆願する」 

あっという間に2月。日本はもう節分ですか。
最近は仕事から帰宅した後が何やら慌しく過ぎてしまい、
ゆっくり文章を紡ごうという気にならないことがしばしば。


それでも今日は、先日古い書類を整理していたら出てきた、
こんな詩を紹介してみたいと思います。
(宗教詩なので、興味のない方は飛ばしてくださいね)


今からなんと22年も前の1987年のことなのですが、
カトリック教会の教区報にさりげなく掲載されていた詩でした。
その詩の持つ静かな佇まいに惹かれ、
その詩の日本語訳をされた神父様に手紙を書いて、
元の英文(と言ってもそもそもの原文はポーランド語なのですが)を送って頂きました。


ここではまず平沢神父様の試訳をアップし、英文は追記のところに書いておきます。



ヨハネはマリアに嘆願する


母よ。私の心のうねりを小さくしないでください。
私の心のうねりはあなたの目に向かいます。
母よ。他の愛ではなく私の心のうねりを
あなたの半透明な両手の中に向かわせてください。


主はそう望まれたのですから。


私は魚取り。
愛すべき所など少しもありません。


私は湖の岸辺に静かに立って
足下の砂を踏み砕いていますと
突然、主を感じたのです。


母よ。あなたは御子(おんこ)の神秘を私の中にもう抱き締めることはないでしょう。
でも私は静かにてんにんかの木の枝のようにあなたの思いを覆い包みます。
あなたのことを「お母さん」と呼べとは主のお望みなのです。
私はあなたにお願いします。
この主の言葉があなたのために無意味なものとならなうように。


私達二人に向かって吐かれた言葉の意味を推量することは容易ではありません。
御子を信ずるすべての人が
これらの言葉に秘められた
初めの愛を黙想するためなのです。


(カロル・ボイティワ枢機卿 「母」より、平沢忠雄試訳)




ヨハネはキリストの使徒であり、愛弟子であった人ですが、
キリストの死後、ヨハネが聖母マリアに向かって言葉をかける形になっています。


キリストは亡くなる直前、十字架の上から側にいるマリアとヨハネに
「この人はあなたの母です」「この人はあなたの子です」
との遺言を残しており、カトリック教会的には
この言葉が聖母を教会の母と遺言したのだという解釈がなされるわけですが、
そういうゴタクはともかくとしまして、
情景としては、そう、子を亡くして悲しむマリアを慰めるヨハネ、ということになるわけです。


作者のカロル・ボイティワは後にヨハネ・パウロ2世教皇となった方ですが、
20代か30代の若い頃に詩をいくつも書いていたとかで
1950年に「母(Matka)」として出版された詩集の1篇がこの詩にあたるのであります。


秋の午後の穏やかで透明な陽射しの中で、
葉を落としながらも凜といずまいを正す木だとか、
あるいはモーツァルトのピアノ協奏曲第23番の第2楽章だとか、
そんなものをふと思わせる詩、です(私にとっては、ですが)。


22年前、まだまだ感性の鋭かった私には
心が震えるような印象を与えた詩だったのですが、
久しぶりにそんな自分であったことを思い出してちと嬉しくなりまして、
そんな自分のためにアップしておくことにしたのでありました。


そんな自己満足にお付き合いくださってここまで読んでくださったそこのあなた!
感謝しておりますですよ、はい。




John beseeches her


Don’t lower the waver of my heart,
It swells to your eyes, Mother;
don’t alter love, but bring the wave to me
in your translucent hands.


He asked for this.


I am John the fisherman. There isn’t much
in me to love.


I feel I am still on that lake shore,
gravel crunching under my feet –
and, suddenly – Him.


You will embrace His myster in me no more,
yet quietly I spread round your thoughts like myrtle.
And calling you Mother – His wish –
I beseech you: may this word
never grow less for you.


True, it’s not easy to measure the meaning
of the words He breathed into us both
so that all earlier love in those words
should be concealed.

[ 2010/02/02 23:33 ] monjablancaのお気に入り | TB(0) | CM(2)

心が震えるような印象を与えられた詩。私はまだ一度もそんな経験がありません。この機会に いったい自分はどんなものに感動したのか、するのか。思い出したいです。アタフタと毎日を過ごしてきましたので。とても良い切っ掛けを頂きました。
[ 2010/02/03 07:31 ] [ 編集 ]

>新山さん

そんな風に言って頂けるととても嬉しいですe-247
でもそういう経験ができるのは、若い内かもなぁ~、
と最近思っていたりします。

当時は自分のことだけで精一杯だった私でしたが
年を経ると共に、自分のことだけやているわけにはいかなくなって
更にはゆっくりと自分のために使える時間がなくなってしまいます。

それはそれでまた楽しいわけですが、
振り返ってみると、あの頃は本当に贅沢な時間を過ごしたなぁ~、と
しみじみと実感したりもするのであります。

それでも、自分にとってこれが大切なもの、
心に残って忘れられないもの、
そう言えるものがあるということは幸せですよね。
[ 2010/02/04 00:37 ] [ 編集 ]

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