ウーゴ・アルセのこと 

ローセンベルグのビデオが世に出てから3週間が経過し、
さすがに沈静化を見せてきています。
もっとも、これをきっかけに始まった
若者を中心とする抗議行動は続いており、
今週は今までのような日曜日の抗議集会に替えて
(と言っても、日曜日の抗議集会もあるとは聞いていたのですが、どうなったやら)
土曜日の夕方に祈りの集会が行われました。
Guatemaltecos piden Paz y Justicia en Velada


この活動が長く続くものであってほしい、と願うべきなのか、
こういう活動がなくても正義が全うされる国でありますように、と願うべきなのか。
何だかフクザツ・・・・・・。





さて、ローセンベルグのビデオはインパクトのあるものでしたが、
実はローセンベルグよりも以前に、やはり
「この文書を読んでいるということは、私はもはや既にこの世に存在していないからです」
という「遺書」を残していた人がいます。


その人の名はウーゴ・アルセ。
コロンが大統領に就任して間もない2008年の1月24日に
市内のホテルで遺体で発見されたのでした。
以前に書いたことがあるような気がするな~、と思って探したらありました。
駆け足で振り返る、最近のニュース


アルセは以前は夕刊紙にコラムを寄稿していたのですが、
誰彼構わず強烈に批判する癖がたたってか?
新聞社等から総スカンをくらったようであります。


その中でも強烈に批判していたのが現大統領夫人のサンドラ・デ・コロン。
大統領選挙中の痛烈な批判に怒りまくったサンドラ、
その後名誉毀損などでアルセを告訴するのですが、
この裁判もアルセが死んで無用のものとなっています。


さて、「私は告発する」と題されたその遺書。
かいつまんで内容を取り上げておきたいと思います。


この瞬間、あなたがこの文書を読んでいるということは
私はもう存在していないから、つまり私は生きていないということです。
「事故」、「自然死」、「自殺」その他のどのような状況であったとしても。


1999年4月に「自殺」した国会議員エクトル・クレー・オレヤナの身に
実際には何が起こったかおわかりになるだろうか。
彼にはまだまだ生きる理由、そして戦う理由があった、
にもかかわらず、自殺と宣告されたのだ。


私の死に対しても同じようなことが起こるだろう。
もっともプレンサ・リブレ紙には私の死のニュースを載せるだけの
尊厳があるだろうか?
あの新聞は私に対してのみならず国民に対しても敵となり
選挙に勝った者には跪いたのだ、
そして私が書いた「プレンサ・リブレ紙の横暴」というコラムは
日の目を見ることもなかった。


私は犯罪により口をふさがれるわけだから、
これ以上告発することも、公の場で叫ぶことも不可能だ。
私の命は私を排除するようにという命令を受けた者により終わりを告げる。
私は卑怯にも殺害されたのだ、しかし私の口を塞ぐことは決してできないだろう。


サンドラ・フリエッタ・トーレス・カサノバ・デ・コロンは
ORPA(注 :ゲリラの一派)でマルタというコードネームで呼ばれており、
誘拐、恐喝、窃盗、強盗などで収入を得ていた。
アルバロ・コロン・カバイェーロスは麻薬とアルコールの中毒で
彼を操るものの手の中にあるおもちゃに過ぎない。


あなたは私の死の復讐を実行してくれるのだろうか、
それともイサイアス司令官(本名ラファエル・アウグスト・バルディソン・ヌニェス、
内戦時代のサンドラ・トーレスの愛人)が
今ではファーストレディの側近であることに恐怖を覚えるのだろうか。


私はここに国民と全世界に向けてメッセージを残す。
私の血はこの国の大地を豊かにする肥やしとなるだろう。



この方、詩人でもあるので、文章がとっても詩になってるんですよね・・・、
要点を言えば
プレンサ・リブレと大統領夫妻をそれぞれ非難する内容。


で、アルセはホテルの一室で遺体で発見され、
検死の結果自殺と判断されました。
実際のところ、アルセがいうように他殺なのか
それともこの遺書を残した上での覚悟の自殺なのか、
その辺りは定かではありません。


はっきりしているのは、アルセがサンドラを強烈に批判していたこと。
アルセのメッセージの中でサンドラの愛人とされているイサイアス司令官は
グアテマラの内戦史に登場する人物です。


1996年、現在グアテマラ市長のアルバロ・アルスーが大統領に就任した年。
内戦終結の予備段階として、URNG(ゲリラ)側は「戦争税」の徴収を停止、
そして停戦を発表したのでした。
しかしゲリラの収入源と言えば、この戦争税。
ついでにドンパチやらないとなると、何したらいいんだい?


というわけなのかどうかは良くわかりませんが
1996年8月、セメント会社の一家であるオルガ・デ・ノベラが誘拐されます。
誘拐時にパトカーと同じモデルの車が使われていたことから
当初は警官の関与が疑われたのですが、
捜査の結果(捜査には警察ではなく軍が関与)、ゲリラの犯行であることが発覚、
イサイアス司令官とミンチョ(本名はフアン・ホセ・カブレラ)の2人が逮捕されます。
2人ともORPAのメンバー。


10月、2人は市内の公衆電話から身代金要求の電話をかけていたところを逮捕されるのですが、
ミンチョについては逮捕された後、行方が不明となっています。
逮捕時に頭を強打されたことから、同日死亡したと見られていますが、
公式発表では「2人を同時に逮捕することはできなかったので、1人は逃した」んだとか。


イサイアス司令官については、本人が人質との交換を申し出、
こうしてイサイアスとデ・ノベラは自由の身となったのであります。


この誘拐事件はURNGの知らぬところで行われたものであったため、
ORPAの総司令官であったガスパール・イロム司令官こと
ロドリゴ・アストゥリアス(ノーベル文学賞作家ミゲル・アンヘル・アストゥリアスの息子)は
和平交渉の席から辞退せざるをえなくなったのでした。


で、これは内戦とは何の関係もない一般犯罪のはずなのですが、
イサイアス司令官がこの件で起訴されたなんて事実はどこにもありません。
イサイアスがサンドラと愛人関係にあったのかどうかは知りませんが
サンドラの側近であることはどうやら事実のようです。


アルセの告発の真実性については、真偽のほどを確かめる術がないのですが
ローセンベルグの事件と重ね合わせてみた時に
図らずも同じ影が見えてしまうのはどうしてなのか。不思議です。


そう言えばローセンベルグが告発していたグレゴリオ・バルデスという経営者、
怪しげな形で入札に参加し、公共事業を落札したらしいという事実が明るみに出ており
少なくとも汚職に係わっていたのではないかと見られます。
もっとも、検察の発表じゃなくて新聞の調査によるものですから、
検察にどこまでできるのかはとっても心もとないですけれどもね・・・、
事件が解決されてすべての事実が明るみにでることはあるのか・・・、
まだまだ先は長いように思います。



[ 2009/05/31 11:58 ] ローセンベルグ事件 | TB(0) | CM(2)

まるでローゼンバークがアルセと同じような跡を辿ったように感じます いったいコロンと言う人物が何を考え国のためにどんな方針を取ろうとしているのか全く掴む事ができません。国民はどこに怒りを持っていけばいいのか困っているのでは?
[ 2009/06/02 09:38 ] [ 編集 ]

>新山礼子さん

残念ながら、コロンという人物は大統領の器じゃない、というのが友人たちとの一致した意見。
大統領どころか、政治家としても適性のない人だよなぁ、と思うのです。
多分、悪い人ではないとは思うのですが。

コロン本人にはどういう国にしたい、という明確なものはないように思います。
「何となく社会主義」で、確かに貧困層には篤い政策ですが
それが貧困層のためか?と言われると、そりゃ次の選挙のためでしょ、って感じで。
その間に国が疲弊しちゃってどうにもなくなるよ、
ここはベネズエラみたいに国営化できる資源もないしねぇ?

経済の発展=金持ちを利する、と考えている間は
この国はにっちもさっちも行かなくなるのは明らかですが、
あ、そっか、自分のお友だち関係が甘い汁を吸って、
そっち方面の経済が発展すればいいのか。いやいや・・・。
[ 2009/06/03 00:17 ] [ 編集 ]

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://guatebuena.blog108.fc2.com/tb.php/623-d846c58e