人権擁護官の妻の誘拐事件 

グアテマラには人権擁護局というのがあって
人権擁護官という役職の人がここのトップです。
現在の人権擁護官はセルヒオ・モラレス。
この人、どうも何だか政治的野心のありそうな、
ちょっと怪しげな人・・・という感じはするのですが。


さて人権擁護官であるからには、
国民の人権が守られているかどうかを監督するのが仕事です。
その中にはもちろん逮捕された容疑者が
人権を侵害されることなく法的手続きが行われるよう監視するのも入るわけですが
あまりにその仕事に熱心なために?容疑者よりに活動してしまって、
実はこの人は犯罪者擁護官なんじゃないか、と言われる始末。


凶悪犯罪が多くて、そのほとんどが刑罰を受けないまま、という国ですし、
容疑者の人権保護には熱心でも
被害者の人権を省みないというのもまた事実のようで
そんなわけで、なかなか評価が難しいのがこの人権擁護官。


さて、今朝のこと。
このモラレスの妻グラディス・モンテロッソが昨日朝誘拐され、
昨日の夜の内に釈放されたものの
精神的ショックを受けているので市内の病院に入院、
副大統領やら米国大使がお見舞いに行った、
というニュースが流れました。
Gladys Monterroso, secretaria de Encuentro por Guatemala, fue secuestrada


モンテロッソ、エンクエントロ・ポル・グアテマラ(EG)という政党の
首都圏地域の会長?総裁?らしいのですが、
人権擁護官と言えば恨みを買いやすい役職でもあり
その妻を襲えばもちろんモラレス本人への脅迫ともなります。


どちらにしても事実関係が全く流れてこないので
なんだか釈然としないまま憶測で物語るしかないのですが、
ちょっと気になる事件ではあります。


というのは、モンテロッソが属するEGという政党、
ここにはニネス・モンテネグロという国会議員がいるのですが、
このモンテネグロの元夫は内戦時の1984年に行方不明となったまま
現在に至っています。


そこへ出て来たのがこの人権擁護局。
コロン政権になってから内戦時の文書の検証が行われていますが
人権擁護局は旧警察(PN)の文書を譲り受け、
内容をチェックしていたのでした。


2009年3月5日。
モンテネグロの元夫エドガル・フェルナンド・ガルシアの失踪に関与したとして
当時の警官エクトル・ロデリコ・ラミレス・リオスが逮捕されます。
容疑は不当逮捕、強制失踪、略取誘拐、職権濫用、人類の義務の不履行(なんじゃそりゃ)。
なおラミレスは逮捕時も警察(PNC)に勤務しておりました。


さて人権擁護官の発言。
「ガルシアの行方について調べていたところ、
 ラミレスが違法行為を犯したこと、
 また彼の他にも何人もの人物が関与したことが確認できた。
 なのでラミレスの逮捕を請求した」。


私、このニュースを聞いた時、ものすごく違和感を感じました。
和平合意が調印された時、内戦に関する一般犯罪はチャラになったと思っていましたから。
少なくとも、ゲリラ側の犯罪は確かにチャラになっているはずなのです、
ただしこれに含まれないのが人道に反する罪、というヤツ。


エフライン・リオス・モントを含む当時の政府・軍関係者が告発されているのも
人道に反する罪でだったと思ったし・・・。
それなのに。
どう見ても、上官の命令を受けて逮捕を行ったに過ぎないと思われる人物が逮捕され、
これで「正義が行われる」と言っている人がいるのには
違和感を感じずにはいられないです。


それは例えば戦争で「相手を殺してこいっ!」と命令されて実行した兵士が
戦争後に殺人の罪で裁かれるようなもの、じゃありませんか?
そんなのって、あり??


そりゃもちろん、事実関係を明らかにして責任を追及することは大切でしょう、
でもこのやり方だと、またしてもトカゲの尻尾を捕まえて、
背後にいる本当の責任者には
「これからあんた達のところに捜査の手が及ぶから、さっさと逃げてくれ」
と言ってるようなものじゃないんでしょうか。


まあともかく、ガルシアは失踪当日、仕事に向かう途中で友人をみつけ
2人で車で目的地に向っていたところ、
警察の検問で止まるよう命じられたが
2人は逃げようとしたので発砲しながら追跡、2人とも負傷したが
ガルシアは捕らわれて警察署に移送され、その後行方不明となった。


なおガルシアはグアテマラ労働党(左派)のメンバーでもあり、
なので警察から逃げようとしたのかもしれないけれど、
考えて下さい。
検問で止まれと命じられて止まらない人を逮捕することが違法ですか?
まあ、負傷した人を病院に連れて行かなかったり、
職務質問じゃなくていきなり逮捕とかだったら確かに問題あるのかも、
でも最近の情勢で、検問突破したヤツを警察が逮捕できなかったら
それこそ非難轟々だろうなぁ・・・と思うと、
これもまた何だかエラク複雑な心境になります。


話が大きく逸れましたが、
こうして人権擁護官はガルシアの失踪事件の他にも
警察の書類をゴソゴソ捜して内戦に関する犯罪を追及しようとしているわけです。
それをおもしろく思わないどころか
そんなことをされたら困る、と思ってる人がいても不思議ではない上
誘拐の仕方も解放の仕方も、一般の誘拐とはちょっと雰囲気が異なるだけに
一体誰がどんな理由で誘拐を実行したのか、気になります。
そういう意味でも人権擁護官がこの後何を話し、
どういう行動を取るのかに、注目です。


巷では、被害者に同情しながらも
「またきっと加害者を擁護するよ」という声もあり。
「今度こそ私達の苦しみがわかっただろう」と言う人もいますけれど。


どちらにしても、これも迷宮入りかな・・・。



[ 2009/03/26 22:35 ] ニュース | TB(0) | CM(4)

複雑怪奇 何年後かに小説ができそうですね。 どこの国も政治に利用された落とし穴の事件が多いでね。 日本ではガテマラとはずいぶん質が違いますが、今の小沢氏の事件も落とし穴だといわれていますが。この場合どっちもどっちですよね。ちょっと比較できないことを書きました。
[ 2009/03/27 07:24 ] [ 編集 ]

人権擁護官の記者会見によりますと、

>新山礼子さん

モンテロッソの体にはタバコの火を押し付けた痕とか
殴られた痕ってのが何ヶ所もあったそうです。

朝誘拐されて夜解放されるまでの約13時間、
身代金を要求する電話はなかったということですから
やっぱり政治的なものでしょうね。

手口としては内戦時を思い起こさせるものでもあり、
被害者を解放したのは
メッセージを伝えさせるためなのではないかな・・・
と思うわけですが、何にしろ、とりあえず無事で良かったです。

まあそれにしても、です。
最近、大統領選挙でコロンに負けたオットー・ペレスが「自分なら治安を回復させて見せる」とばかりに
テレビCMに加えて大統領に「治安回復計画」なるものを提出したとか。

コロンは「こんな計画、内戦時代に逆戻りだ!」と投げ捨て、
「治安を悪化させて政情を不安定にしているのはペレスだ!!!」
と証拠もないくせに非難してみたり。
本当に○○の穴の小さい奴やな・・・。


そう言えば今朝の新聞の風刺漫画、こんなのがありました。
「経済危機は?」と聞かれたコロン、
「それは北の政府(アメリカ)のせい」。
「暴力犯罪が多いのは?」
「それは前政権のせい」。
「ギャング(麻薬組織かな)が多いのは?」
「それは前の前の政権のせい」。
「解決策が見つけられないのは?」
「それは次の政権のせい」。
なんでもかんでも誰かのせいにするコロンのことを鋭くついてて笑っちゃいました。


その一方で、成果を出さなきゃと
「CICIGが大事件を3つばかり表沙汰にするから。
 それで迷惑をこうむる人物もいるだろうけれど、
 正義が何事にも優先するから」
と黙っていた方がいいことまでペラペラ。
この3つの事件って、
例の中米議会議員殺人事件(エルサルバドルで容疑者が一人逮捕されています)、
国会のお金が先物取引に流用されて大穴を出した事件、
昨年サカパで乗客のニカラグア人ごとバスが焼かれた事件だそうです。
そんなにびっくりするような事実が出てくるかなぁ~?

これとは別に、先日、エフライン・リオス・モントの息子で
ポルティーヨ政権時代に軍の幹部であった
エンリケ・リオス・ソサが軍の公金流用に関係したとして逮捕されたのですが
「リオス・モントの息子だろうと、特権なんてない。
 FRGだろうがUNE(政権政党)だろうが、
 正義は皆にとって平等でなければならない」
と大統領。

いやでもしかし、政府のお金を勝手にサンドラのところに横流ししてるアナタに言われたかないわね?
(各省庁に割り当てられた予算が、サンドラ率いる社会連帯局なんてところに勝手に割り当て直され、
 そこから先の使途は不明だったりしているのです)

次の政権がUNEじゃなくなったら、真っ先にCicigに刑事告発されるのは大統領だと思いますけどね・・・。
[ 2009/03/29 00:10 ] [ 編集 ]

新聞の風刺漫画 堂々と描かれていることはちょっと安心。少なくともまだ民主主義が息をしていることですよね。これで口封じをされたら恐ろしいですよね。国民が少しずつでも賢くなることができれば。ですね。それにしてもずいぶん露骨なことをするものですね。
[ 2009/03/29 06:06 ] [ 編集 ]

中米は

>新山礼子さん

少なくとも現在は、強権で国民を従わせる、というタイプの大統領はいないですね。
コロン大統領というのはそういう強さからはほど遠いところにいる方ですし。

南米に行けばチャベスのように、かなり強引な大統領もいますけれど・・・。

政治に対する風刺はOKですし、批判もどんどん出ています。
それはそれでいいのですが、決して民主主義が万能とは思えなくて
この民選による大統領制、いい加減辞めようよ、と思う今日この頃であったりします。
[ 2009/03/31 06:15 ] [ 編集 ]

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://guatebuena.blog108.fc2.com/tb.php/594-bb4f5ae1