ある消防士の物語 

先週一週間、首都では雨らしい雨は降らなかったものの、パン・アメリカン・ハイウェイがロス・エンクエントロスの手前(首都から行った時、の話ですが)の、チュポル村で大陥没。で車が通れなくなりました。人は通れるみたいですけどもね。

今年の雨季は11月の半ばまで続く・・・という予報もあり、まだまだ安心してはいられないようです。

一方、アマゾン流域は30年ぶりとかいう大旱魃。北米大陸と南米大陸の雨の降り方がどうも逆なんじゃないかという感じです。

金曜日のSiglo XXI(シグロ・ベインティウノ)紙に、「15人を救出しても十分ではない」と題した、タカナの自治消防団員の記事が出ていました。ちょっと長くなりますが、今日はこれをご紹介してみたいと思います。

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彼の家族はかすり傷一つ負わなかった。家も無事なら、ペットも元気で、その点では彼は運が良かったと思っている。しかしながら、この一週間というものの休むことなく働き続けたため、長靴は泥でまみれ、スコップを握る手はがちがちになってしまった。

7日ばかり前のこと。サン・マルコス県タカナ市のマウリシオ・アリエル・メリダは、その町の唯一の自治消防団員として、名の知られた人物であった。彼の言うところの「天職」が、近くの町で起こった土砂崩れから、15人を救い出したのであった。

すべては一本の電話から始まった。「午後3時頃だったか、携帯電話が鳴ったんです。私の家から約2kmのところにある、クア村からの緊急の呼び出しでした。土砂が落ちてきたということはわかっていましたが、あんなにひどいとは夢にも思っていませんでした」。

現場につくのにかかった時間は数分間であった。しかし、その時目にしたこと、耳にしたことを消し去るには数年が必要であろう。いや、あるいは決して消え去らないのかもしれない。おびえた住民が右往左往する騒音の中、助けを求める女性の声が耳に入った。

その声は土砂に埋もれ、今にも屋根が壊れそうな家の中から聞こえてきた。隙間から食堂に入ると、女性が泥の中でもがいていた。テーブルの下には、6歳の女の子の小さな体が見えた。

「最初に、母親の方を助けようと思いました。ですが、その時にはもう隙間がふさがっていたんです。若者たちがつるはしで屋根を壊し、そこから女性を助け出しました。そこで、女の子を助け出そうとしたのですが、腕の中から滑り落ちてしまいました。泥がどんどん上まで上がってきて、もう子どもを見つけられませんでした。真っ暗で、何も見えなかったんです。やっと何かに触れたと思ったら、それが彼女でした。でも、もう既に息がありませんでした」。

泥の中で亡くなった女の子のことを思うと、夜も眠れないという。15人を救出したという事実すらも、その女の子が自分の娘であったかもしれないと思っただけで感じる苦痛を和らげることはできない。

「最初に子どもを助けるべきでした。泥が女の子を飲み込もうとしていたのに、自分はそうしなかった」と涙を拭う。

「時間をもとに戻して、彼女を蘇らせることができるなら、命をあげてもいい。だけど、それはかなわないことです。であれば、自分にできることは、もう誰も死ぬことがないように働くことだけです」。

何人もの命を救うことができたにもかかわらず、マウリシオは、この時のことをいつまでも忘れることはないだろう、と言う。住民たちも、この夜、彼がしたことを忘れないであろう。この救出活動で、彼には新しい名前がつけられた。「英雄アリエル」。今ではそう呼ばれている。


[ 2005/10/17 05:56 ] できごととか | TB(0) | CM(0)

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