ローセンベルグ事件 一審判決 

ロドリゴ・ローセンベルグ殺人事件の実行犯グループ9人に対する判決は
7月15日に下されています。


当日は被告人の最終弁論があり、
その後判事(3人による合議制)が8時間の話し合いを行った後
17:35に法廷が再開され、判決。


この裁判、2週間ほどで結審したわけですが
その間に証言台に立った証人は78人、
物的証拠として提出された電話記録(SMSも含む)は3345件とか。
事件現場付近の防犯カメラに映っていた映像も証拠として採用されています。


結果はCicigの主張が全面的に認められる形となっており、9人全員が有罪。
以下9人それぞれの名前と判決を記録しておきます。


ウィリアム・サントス(William Gilberto Santos Divas)

暗殺グループのリーダー。
本人は殺人については無罪を主張していた。

判決:懲役38年(殺人30年、各種違法行為8年)


ルカス・サンティアゴ(Lucas Josué Santiago López)

ローセンベルグに実際に発砲した人物と認定されたが本人は否定。
「自分がやらなかったことを償わされるハメになった。
 (司法取引したカルドナは)自分が助かりたいために
 自分に責任を押し付けている」と主張。

判決:懲役38年(殺人30年、各種違法行為8年)


ヘスス・カルドナ(Jesus Manuel Cardona Medina)

司法取引を行い、事件の真相を明らかにする鍵となった人物。
暗殺グループでは、バルデス・パイス兄弟との連絡係であり、
バルデス・パイス兄弟はローセンベルグの依頼により
ローセンベルグの代わりに暗殺グループとのコンタクトを取ったとされている。

「脅されたにも係わらず、真実を打ち明ける勇気を持っていたのは自分一人だった。
 バルデス・パイス兄弟は資産があり、影響力のある人物で
 自分には生命の危険があった」。

判決:懲役12年8月(殺人10年、各種違法行為2年8月)


サムエル・ヒロン(Samuel Girón Cobar)

事件当日、ローセンベルグの後をつけた車の所有者。
付近の防犯カメラに映っていた車を割り出したことが
事件解決に繋がった。

判決:懲役8年(各種違法行為)


ホセ・ルアノ(José Armando Ruano Gaitán)

判決:懲役48年(殺人30年、各種違法行為8年、軍用武器の不法所持)


エドウィン・ロペス(Edwin Idelmo López)

エスクイントラで犯罪グループを率いている人物でもある。

判決:懲役38年(殺人30年、各種違法行為8年)


ミゲル・オルドーニェス(Miguel de Jesus Oldóñez)

事件当時現職警官であったため、懲役が加算されている。

判決:懲役10年8月(各種違法行為)


バイロン・サントス(Byron Estuardo Santos Divas)

判決:懲役8年(各種違法行為)


バルモリス・グスマン(Balmoris Guzmán Orellana)

判決:懲役8年(各種違法行為)


この裁判は実行犯グループに対するものでしたが
「主犯格」とされるバルデス・パイス兄弟は先月自主しており
現在は拘留中。


ちょっと不思議なのが、バルデス・パイス兄弟が自主する確か前日、
国軍の施設を拘置所あるいは刑務所の代用として使用できるという決定がなされていたところ。


で、バルデス・パイス兄弟は当然のごとくその国軍基地の方へ収監されています。
他にこちらのお客となっているのは元大統領でアメリカから引渡し要請がある
アルフォンソ・ポルティーヨ。


この3人が1室を共同で使っているのだそうで、
決して快適な環境ではないようですが、
他の囚人に危害を加えられる恐れはなさそう。


もっとも、3人の食事やその他は更生施設局が面倒を見ているそうなので
食事に毒を盛るとかはあるかもしれないですけどね・・・・・・。


それにしても、こんなもの押し付けられる国軍も、ちょっとかわいそう・・・・・・。



[ 2010/07/19 23:59 ] ローセンベルグ事件 | TB(0) | CM(0)

ローセンベルグ事件 一審公判 

ロドリゴ・ローゼンベルグ殺人事件の実行犯9人に対する公判は
6月28日から始まっていましたが
7月14日で結審、
翌15日判決が下されました。


日本の裁判に慣れているとびっくりするのですが
ここでは事件に対する公判は月~金の連日行われ、
結審の翌日には判決、という
超即決の裁判制度となっています。
裁判に至るまでに行かない事件が多いのが欠点ですけれど、
一旦始まった裁判がぐずぐずぐずぐず引き伸ばされて、
いつまで経っても結審しない・・・・・・なんて話はありません。


鍵となる証言をしたのはローセンベルグの秘書と運転手の証言ですかね。
ローセンベルグの幼い頃からの友人だったという人物の証言は
ローセンベルグがマージョリー・ムサと恋愛関係にあったことを裏付けており、
ビデオを録画したマリオ・ダビッド・ガルシアは
ローセンベルグが録画を依頼してきた経緯を証言していますが、
一番印象に残ったのはローセンベルグの子息であるエドゥアルドの証言でした。


エドゥアルドは父親が死の一週間前から別れの儀式を始めていたこと、
「自分の人生を感謝している、
 自分の人生で受けたすべてのことに感謝している」と言っていたこと、
マージョリーの死に激しいショックを受けていたこと、
またムサ親子の殺人事件に関連して副大統領と面会していたこと、
などなどを証言してくれたのでした。


あのビデオが公開された当初は
「ローゼンベルグは殺される可能性があると覚悟していた」
と誰もが思ったわけでしたが
そうではなく、死を決意した人ことが伺われる証言ですよね。


マリオ・ダビッド・ガルシアは、録画した時のローセンベルグの様子について
「正気だった、(愛する人を失って)絶望している人には見えなかった」
と証言していますが、
これは「殺されるかも」と脅える人とも
また違っていたことを裏付ける証言ともなっています。


今日はちょっと短いですがこの辺で。
実は最近、ブログを書き出すと眠くなるという・・・。
何かの条件反射なんだろうか。
実行犯と見なされる被告9人への判決についてはまた別途。


[ 2010/07/16 23:29 ] ローセンベルグ事件 | TB(0) | CM(0)

ローセンベルグ事件の顛末 

昨日ハイチで起こった大地震はアメリカ大陸最大の地震とかいう話ですが
普段はあまり地震の多くないカリブにいきなりこんな大地震がやってくるとは。
亡くなられた方が10万人を越えるのではないかと言われていますが、
無事だった方々にとっても辛い日々になるでしょう・・・。


グアテマラでも今日小さな地震があったようですが、
こういう小さな地震でガス抜きして頂ける方がホント、助かる。
ちなみにグアテマラもハイチに支援物資を送り届けるそうです。
政府はハイチのための援助受付窓口を開いていますが・・・、
それより国内の人たちを助けてやれよ(とつい言いたくなる)。


さて、グアテマラ国内の方に目を向けますと、
やはり昨日、CICIG(グアテマラの無処罰問題対策委員会)が
ローセンベルグ事件について最終報告を行っております。


ご記憶の方もいらっしゃるかと思いますが、
昨年の5月10日に殺害されたロドリゴ・ローセンベルグ、
死後に自分の死を予告したビデオが公開され、
しかも大統領、大統領夫人らを告発していたから
グアテマラ中がてんやわんやの大騒ぎになってしまったのでありました。


そしてその最終報告というのがまた
「ローセンベルグ自身が自らの死を計画した」という天地が引っ繰り返るようなもの。


かいつまんでここに取り上げてみたいと思いますが、
その前に、昨年12月でしたか、この事件の実行犯グループが逮捕されており、
実行犯グループに指示を行ったとして2人の人物が指名手配されてる状況だ、
ってことをお含みおき下さい。
また、ローセンベルグの事件に先立って
カリル・ムサとマージョリー・ムサの親子が殺害される事件があったことも
思い出しておいてくださいね。





事件当時、ローセンベルグは母親を亡くし、
2番目の妻と離婚し、子供達の親権も失うという状況にありましたが、
それに追い討ちをかけたのがムサ親子の殺人事件。


ローセンベルグはマージョリーと恋愛関係にあり、
カリルにはデリケートな件の相談を受けていたことから
2人が殺されたのは自分のせいだと思い詰め、
精神的に追い詰められていたのでありました。


彼は事件の真相を究明しようと奔走します。
しかし、いささかの情報は得られたものの
証拠といえるようなものを掴むことはできず、
そういう状況にも絶望していたのでありました。


そうして彼は一つの計画を思いつきます。
最初の妻の従兄弟であり仲の良い友人であるバルデス・パイス兄弟に
「脅されているので、殺したい奴がいるんだ」と相談。
そうしてこの2人はローセンベルグに殺し屋一味を紹介します。


そのためにお抱え運転手に携帯電話を2つ買わせに行っています。
この2つの携帯電話、使われたのは5月5日から10日の間だけでした。
この2つの携帯のうち1つがバルデス・パイス兄弟経由で殺し屋グループの手にわたり、
もう1つはローセンベルグが自分が脅迫を受けていると偽装するために使われたのだとか。
使用された場所は彼のアパートであったこともわかっています。
こうしてお膳立てが整ったところで、
バルデス・パイス兄弟は殺し屋グループにQ30万を前金払い。


5月13日、パナマから$4万(Q32万ほど)の小切手が届きます。
小切手の振出人は大統領府の官房長官ルイス・アレホス。
ローセンベルグの秘書が受け取っておりますが、
これはバルデス・パイス兄弟に渡すようにと指示されており、
その通り実施。ただし、小切手は現金化されておりません。


さてローセンベルグは他の友人たちにも脅迫を受けていると話しておりました。
そして例のビデオも撮影し、準備完了。


5月10日の朝。家を出る前に、カリルのもう一人の娘であるアシサに
「ストレス発散のために一回りしてくるよ」と電話で話していたとか。
その電話を終えて外に出たところで自分が雇った一味により殺害されたのであります。






実はこの説、かなり以前からネットには流れておりました。
私が見たのは7月か8月頃でしたか。
「ローセンベルグの携帯にはマージョリーとのSMSがたくさん残されていた。
奴はマージョリーと愛人関係にあって、
愛人が殺されたから絶望して死んだって説が有力だ」という内容でした。


自殺にしてはいかにも回りくどいし、
自分の親友を巻き込んでしまう辺りはちょっとどうかしらんと思うわけですが、
Cicigもその仮説を裏付けるのに6ヶ月をかけたのだそうです。


Cicigのカルロス・カストレサナは報告に際し、
それでもローセンベルグは名誉ある人物であった、
様々な問題に直面しながらも、
彼はビデオで述べたことを事実だと信じており、
その信念に基づいて行動を起こしたのだから、と言っていました。


そしてまた、ローセンベルグ事件に関連して、
当時内相だったサルバドル・ガンダラが
偽証人を仕立てて証言させた話なんかもあったわけですが・・・、
その話はまた別立てにした方がおもしろいかも。


実は今朝のラジオの対談にこのカストレサナが出演していたのですが、
この時彼はローセンベルグ事件に関連して、こんな話もしていました。


この国のシステムを改善するために当局に対し12の要望や提案を行っているのに
当局が何もしない。
例えばCicigや判事に対し防弾車やガードマンを依頼してもつけてくれないし、
国会は治安に関する法案を取り上げる気もないし、
裁判所は裁判所でその職務にふさわしくない人物を最高裁に任命するし。


グアテマラ人は自らどんな国にしたいのかを考えないといけない、
この国の治安は最低で、
首都を含むグアテマラ県の人口100万人10万人に対する殺人件数は90人、
これは世界トップクラスの殺人件数になるのだそうです。


そういう話をまとめて考えてみますと、
ローセンベルグがこの狂言を仕組んだのは
一方で絶望と無力感があり、
そのもう一方でムサ親子の死の真相を究明し
犯人に責任を取らせるためにはこうするしかないと
思い詰めるに至ったのではないかしらん、と思うわけです。


彼は本当に大統領や夫人がその背後にいると思ったわけでしょう。
でも自分には何もできないし、このままでは一切が明らかにされないままになる。
それなら自分の遺言をビデオに残し、自分は殺され、
その後でそのビデオを世に公開すれば・・・・・・。
大統領を糾弾すれば、彼自らがCicigに真相究明を依頼するだろう。
でも、自分の事件を明らかにしようとすれば、
ムサ親子の殺人事件についても調べなければならなくなるだろう・・・。


そしてその通りとなりました。
Cicigは今後、ムサ事件について人員を強化すると言っています。

ただ、割り切れない思いでいるのは
あの事件の後、彼の言葉を信じて集まった人たち。
裏切られたような気がしても不思議じゃないですよね。
それを乗り越えて、より良いグアテマラのために活動を続けることができるか。
捜査の行方とともに気になるところです。



[ 2010/01/13 22:58 ] ローセンベルグ事件 | TB(0) | CM(2)

暗殺計画と大統領報道官 

先日ちらりと触れたような気がするのですが、
野党第一党の党首オットー・ペレス・モリナと
同党の国会議員であるロクサナ・バルデッティの2人が
殺人予告を受けていることを明らかにしたのは先週、5月26日のことでした。


オットーさんは先の大統領選挙で決選投票でコロンに敗れており
次期大統領の有力候補。
ロクサナさんは女性ながらも(むしろ女性だから?)
歯に衣着せぬ物言いで同党のリーダーの一人。


彼らが所属する愛国党(以下PP)の発表したところによれば
2人を殺すようにと命令を受けたグループの1人が
ケツァルテナンゴの人権擁護局に出向き、
暗殺計画があることを明らかにしたのだとか。
これが5月12日の出来事です。


5月12日と言えば、例のローセンベルグのビデオが世に出た日。
それだけに、偶然にしては出来すぎている感がありありですが、
いくらなんでも野党の大物を2人まとめて消すというのも
そらまたいかにも出来すぎた話であって。


何かの容疑で逮捕されそうになった人物が
9回2アウト2ストライクからの逆転満塁ホームランを狙って
ぶち上げた「殺人計画」なのかも、と疑えばいくらでも疑えるわけですが
(実際この人物は重要証人として保護されているわけでして)
そうは言っても、殺人計画となってくれば事は深刻ですから、
もちろん検察も警察も動いているはず、ですよね・・・・・・?


と思ったら大間違いでして検察は人権擁護局から書類を受け取ったことは認めたものの
警察の方は「そんな事実は知らない」んだそうで、いやもうまったく、なんなんでしょ。


もっともこれはオットーさんが仕立てた茶番だという声ももちろんあり。
一番その声がでかかったのが、大統領のスポークスマン、フェルナンド・バリーヤス。
このバリーヤス、コロンの周囲にいる人の中でも
飛びぬけて滑舌と話の内容と話し方がなっていない人で、
こんなのが大統領のスポークスマンって恥ずかしすぎる、と私的には思うような人物ですが
コイツがまた「殺人計画なんてPPが仕立てた政治ショーだ」とマスコミに向って言い放ったのであります。
そっか、毎日何人もが殺されているのはPPの政治ショーだったのか。な~んだ。


・・・・・・いや、そんなわけないだろーーーー!!
てか、こんなに毎日何人もが殺されているこの国で、
この話を(少なくとも上辺だけでも)真剣に取り上げてみせる振りもできない
大統領側近って・・・・・・。
いやそら、いつまで経っても殺人事件はなくならないし、
犯人だって捕まらないわけだわ。


大統領選挙の時、コロンは「犯罪には知性で対処する」と言っていたわけですが
蓋を開けてみたら大統領を初めとして、知性のカケラもない人たちばかり。
こんなだからこの国は良くならないのだなぁ、と暗澹たる気持ちになるわけです。


さて、さすがに怒ったPPの皆さん、
フェルナンド君を国会に証人として喚問したのでありました。
それが下のビデオ。じっくり見るほどの価値はありませんが、
マイクを右手に握り締めて答えているのがフェルナンド君。なんだ、コイツのこの態度。
ちなみに、最初に質問をしている女性がロクサナさんです。





このフェルナンド坊やは以前から
「ペレスはクーデター計画に失敗したから、今度は殺されるなんて騒いでいるんだ」
と発言しておりましてですね、でこの喚問でもその線に沿って発言。
で、最後にはPPの皆さんに「明日証拠を提出しやがれ」と期限を切られたのでありました。


まあ大体、「クーデター」なんて騒いでいたのはコロンとその周辺だけだったわけで、
ペレスも確かに政治利用しようとする動きはあったけれど
クーデターって話じゃないでしょうが。


PPはこの大統領のスポークスマンだけれど公職にいるわけではないフェルナンド坊やに対して
(どうやら大統領の報道局との契約らしいですよ、この仕事)
デマゴーグ、偽証などの罪で告訴することを検討してるようです。
ついでに「クーデターが計画されてると知ってたんなら、なんで告発しないんだ!?」
ごもっとも。


坊やの方は「こんなのは嫌がらせだ、発言の自由に反する」って言ったとか。
スポークスマンなんだからさぁ、自分の発言にくらい責任もってくれや・・・。
虎の衣を借りる狐、てか、虎の衣を借りる狸とはコイツのことだよ。まったくもう。


こんなレベルの人がスポークスマンじゃあ、大統領のレベルも推して知るべし。
なんだか暗いぞ、グアテマラの明日。



[ 2009/06/02 23:55 ] ローセンベルグ事件 | TB(0) | CM(2)

ウーゴ・アルセのこと 

ローセンベルグのビデオが世に出てから3週間が経過し、
さすがに沈静化を見せてきています。
もっとも、これをきっかけに始まった
若者を中心とする抗議行動は続いており、
今週は今までのような日曜日の抗議集会に替えて
(と言っても、日曜日の抗議集会もあるとは聞いていたのですが、どうなったやら)
土曜日の夕方に祈りの集会が行われました。
Guatemaltecos piden Paz y Justicia en Velada


この活動が長く続くものであってほしい、と願うべきなのか、
こういう活動がなくても正義が全うされる国でありますように、と願うべきなのか。
何だかフクザツ・・・・・・。





さて、ローセンベルグのビデオはインパクトのあるものでしたが、
実はローセンベルグよりも以前に、やはり
「この文書を読んでいるということは、私はもはや既にこの世に存在していないからです」
という「遺書」を残していた人がいます。


その人の名はウーゴ・アルセ。
コロンが大統領に就任して間もない2008年の1月24日に
市内のホテルで遺体で発見されたのでした。
以前に書いたことがあるような気がするな~、と思って探したらありました。
駆け足で振り返る、最近のニュース


アルセは以前は夕刊紙にコラムを寄稿していたのですが、
誰彼構わず強烈に批判する癖がたたってか?
新聞社等から総スカンをくらったようであります。


その中でも強烈に批判していたのが現大統領夫人のサンドラ・デ・コロン。
大統領選挙中の痛烈な批判に怒りまくったサンドラ、
その後名誉毀損などでアルセを告訴するのですが、
この裁判もアルセが死んで無用のものとなっています。


さて、「私は告発する」と題されたその遺書。
かいつまんで内容を取り上げておきたいと思います。


この瞬間、あなたがこの文書を読んでいるということは
私はもう存在していないから、つまり私は生きていないということです。
「事故」、「自然死」、「自殺」その他のどのような状況であったとしても。


1999年4月に「自殺」した国会議員エクトル・クレー・オレヤナの身に
実際には何が起こったかおわかりになるだろうか。
彼にはまだまだ生きる理由、そして戦う理由があった、
にもかかわらず、自殺と宣告されたのだ。


私の死に対しても同じようなことが起こるだろう。
もっともプレンサ・リブレ紙には私の死のニュースを載せるだけの
尊厳があるだろうか?
あの新聞は私に対してのみならず国民に対しても敵となり
選挙に勝った者には跪いたのだ、
そして私が書いた「プレンサ・リブレ紙の横暴」というコラムは
日の目を見ることもなかった。


私は犯罪により口をふさがれるわけだから、
これ以上告発することも、公の場で叫ぶことも不可能だ。
私の命は私を排除するようにという命令を受けた者により終わりを告げる。
私は卑怯にも殺害されたのだ、しかし私の口を塞ぐことは決してできないだろう。


サンドラ・フリエッタ・トーレス・カサノバ・デ・コロンは
ORPA(注 :ゲリラの一派)でマルタというコードネームで呼ばれており、
誘拐、恐喝、窃盗、強盗などで収入を得ていた。
アルバロ・コロン・カバイェーロスは麻薬とアルコールの中毒で
彼を操るものの手の中にあるおもちゃに過ぎない。


あなたは私の死の復讐を実行してくれるのだろうか、
それともイサイアス司令官(本名ラファエル・アウグスト・バルディソン・ヌニェス、
内戦時代のサンドラ・トーレスの愛人)が
今ではファーストレディの側近であることに恐怖を覚えるのだろうか。


私はここに国民と全世界に向けてメッセージを残す。
私の血はこの国の大地を豊かにする肥やしとなるだろう。



この方、詩人でもあるので、文章がとっても詩になってるんですよね・・・、
要点を言えば
プレンサ・リブレと大統領夫妻をそれぞれ非難する内容。


で、アルセはホテルの一室で遺体で発見され、
検死の結果自殺と判断されました。
実際のところ、アルセがいうように他殺なのか
それともこの遺書を残した上での覚悟の自殺なのか、
その辺りは定かではありません。


はっきりしているのは、アルセがサンドラを強烈に批判していたこと。
アルセのメッセージの中でサンドラの愛人とされているイサイアス司令官は
グアテマラの内戦史に登場する人物です。


1996年、現在グアテマラ市長のアルバロ・アルスーが大統領に就任した年。
内戦終結の予備段階として、URNG(ゲリラ)側は「戦争税」の徴収を停止、
そして停戦を発表したのでした。
しかしゲリラの収入源と言えば、この戦争税。
ついでにドンパチやらないとなると、何したらいいんだい?


というわけなのかどうかは良くわかりませんが
1996年8月、セメント会社の一家であるオルガ・デ・ノベラが誘拐されます。
誘拐時にパトカーと同じモデルの車が使われていたことから
当初は警官の関与が疑われたのですが、
捜査の結果(捜査には警察ではなく軍が関与)、ゲリラの犯行であることが発覚、
イサイアス司令官とミンチョ(本名はフアン・ホセ・カブレラ)の2人が逮捕されます。
2人ともORPAのメンバー。


10月、2人は市内の公衆電話から身代金要求の電話をかけていたところを逮捕されるのですが、
ミンチョについては逮捕された後、行方が不明となっています。
逮捕時に頭を強打されたことから、同日死亡したと見られていますが、
公式発表では「2人を同時に逮捕することはできなかったので、1人は逃した」んだとか。


イサイアス司令官については、本人が人質との交換を申し出、
こうしてイサイアスとデ・ノベラは自由の身となったのであります。


この誘拐事件はURNGの知らぬところで行われたものであったため、
ORPAの総司令官であったガスパール・イロム司令官こと
ロドリゴ・アストゥリアス(ノーベル文学賞作家ミゲル・アンヘル・アストゥリアスの息子)は
和平交渉の席から辞退せざるをえなくなったのでした。


で、これは内戦とは何の関係もない一般犯罪のはずなのですが、
イサイアス司令官がこの件で起訴されたなんて事実はどこにもありません。
イサイアスがサンドラと愛人関係にあったのかどうかは知りませんが
サンドラの側近であることはどうやら事実のようです。


アルセの告発の真実性については、真偽のほどを確かめる術がないのですが
ローセンベルグの事件と重ね合わせてみた時に
図らずも同じ影が見えてしまうのはどうしてなのか。不思議です。


そう言えばローセンベルグが告発していたグレゴリオ・バルデスという経営者、
怪しげな形で入札に参加し、公共事業を落札したらしいという事実が明るみに出ており
少なくとも汚職に係わっていたのではないかと見られます。
もっとも、検察の発表じゃなくて新聞の調査によるものですから、
検察にどこまでできるのかはとっても心もとないですけれどもね・・・、
事件が解決されてすべての事実が明るみにでることはあるのか・・・、
まだまだ先は長いように思います。



[ 2009/05/31 11:58 ] ローセンベルグ事件 | TB(0) | CM(2)